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偶然から生まれた「やりたい」気持ち地域に根付くことに拘っていきたい

予期せぬ異動や出向。多くのビジネスパーソンが一度は経験したことがあるのではないだろうか。前向きな気持ちばかりでは決してなく、不安もある。そんな“偶然”から、自らの目指す道を見つけたと話す近藤建斗氏は、社員4,000名以上の大手企業から、15名のスタートアップである株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区)への転職を決めた。学生時代は公務員か大手企業の二択だったと話す近藤氏。27歳になった今、当時を振り返って自身の想いやキャリアがどのように変わっていったのか、ターニングポイントとなった3年間について、インタビューを行った。

近藤建斗(コンドウ ケント)さん(株式会社エアロネクスト)
父が測量事務所を営んでいた縁で、地図、測量に関心を持ち、大学在学中に測量士浦の資格を取得。大学卒業後、大手航空測量会社の国際航業株式会社に入社し、営業職として従事。2018年にDRONE FUNDに出向しコミュニティマネージャとして、投資先支援を行う。2021年2月に無人航空機の研究開発&ライセンスビジネスを手掛ける株式会社エアロネクストに転職。国際航業では契約社員として週1の勤務を続ける

想定外の出向辞令。最初は憂鬱で、不安だった。

ーースタートアップとの出会いはどのようなきっかけだったのでしょうか

突然の、予期せぬ辞令がきっかけでした。前職の国際航業がDRONE FUNDと業務上の関わりがあり、千葉さん(千葉功太郎/ DRONE FUND創業者)のもとで修業してきなさいということになりました。父が測量事務所を営んでおり、その影響もあって前職では測量調査の営業として仕事をしていたのですが、スタートアップやベンチャーキャピタルが何をやっているかもよく分かっていませんでした。辞令が出た2018年の3月は、憂鬱で不安な気持ちでいっぱいでした。

ーー出向後はどのようなことを経験されたのでしょうか

1年半100%出向という形で、DRONE FUNDの芝公園のオフィス(当時)に毎日行っていました。新ファンドの立ち上げの時だったので、オフィスにプリンターを設置するところから始まり、大手企業とのアポイントを取って千葉さんと2人で毎日3件くらい営業活動をしました。道中に商談のフィードバックはもちろんのこと、今まで全く知らなかった世界のことを教えていただき、発見や気づきが毎日ありました。また、新しく産業を立ち上げるためにスタートアップと大手企業を結ぶ役割が必要だということで、コミュニティーマネージャーとして、LP(=リミテッドパートナー:ファンドに対する投資家)営業をしました。大手企業と多くの接点ができ、会社同士のお見合いを仲介するというような経験はとても楽しかったのを覚えています。事業開発も勉強できたと感じていますし、起業家の方と大手企業の事業開発責任者の方が交渉を行うような場に入れたことも、とても大きな経験になったと思っています。投資先の会社の経営者と関係性をつくれたこと、ドローン業界のネットワークが持てたということも自分にとって本当に大きなターニングポイントになったと思っています。

千葉さんFB投稿

自身にとって初めての千葉道場ドローン部合宿2018年7月

ーー帰任されてからの仕事内容について教えてください

国際航業の新規事業としてドローンビジネスを始めるということで帰任することになり、帰任の約2カ月後にドローン活用プロジェクトの立ち上げを任されることになりました。専任は私一人で、各事業部の方に兼務で参加いただくプロジェクトです。そこでエアロネクストと橋梁点検をするなど、多くのスタートアップと連携させていただきながら、ドローンを活用した測量手法を検討するということに取り組みました。

国際航業でのドローン事業風景

ーーエアロネクストに転職した経緯を教えてください

エアロネクストとはDRONE FUND出向中に食事をご一緒したり、展示会のスタッフとして同行することがあり、その頃からご縁がありました。最初は私と同郷の山梨出身の方が多いという共通点しかなかったのですが、国際航業帰任後も仕事をする機会があり、少しずつ自分自身のやりたいことが見えてくる感覚がありました。実際にNEXT DELIVERY(下記、参考記事)を立ち上げるタイミングで、小菅村(山梨県)の案件についてもお話を聞きながら、すごく面白そうだなと思ったのが当時の率直な感想です。エアロネクストはもともと知財の会社で競合が少なく、ある種どのプレイヤーともうまくやればお付き合いができるという会社の立ち位置でしたので、DRONE FUNDで偶然ながらも得られた経験や人脈を一番活かせるのではないかというイメージを持てたことも大きかったと思います。最終的には地元・山梨の同郷のCFO広瀬から声をかけてもらい、エアロネクストにお世話になることにしました。2020年夏頃からお話をさせていただいて、入社したのは2021年2月です。

エアロネクストとの出会い

参考
ドローン配送サービスを中心に次世代物流ソリューションを提供する戦略子会社、 株式会社NEXT DELIVERYを山梨県小菅村に設立 ~オンデマンドドローン配送サービスの日本一早い社会実装を目指して~
https://aeronext.co.jp/news/establish-next-delivery-inc/

チャレンジを決めたことで得た、パラレルワークの機会

ーー国際航業では新規事業プロジェクトにアサインされており、近藤さんへの期待も大きかったのではないですか

期待が大きかったかどうかわかりませんが、国際航業には副業規定がまだなかった中で、契約社員として週に1回勤務するという形態を検討いただけたことも大きかったです。ダメ元で相談させていただいたところ、イレギュラーなケースではあるのですが、いったん退職して契約社員という形で仕事をさせていただいています。結果的にコロナもあり、ほぼオンラインでパワレルワークを実現できています。

ーー国際航業では週1日の勤務でどのようなミッションに携わっているのでしょうか。

先端事業開発部という、AIやドローンをテーマとしたビジネス探索を行う30名程度の部門に所属しています。主には社内の既存業務の低コスト化に向けたアプローチや、新規事業開発として新たな点検手法、測量手法の開発に関わっています。

ーーマインドはどのように変わっていきましたか

DRONE FUNDに出向する前に、国際航業の方の紹介で投資家の方と出会いがあり、そこでマインドセットができたことは大きかったと思います。後ろ向きな気持ちばかり先行していたのですが、「考え方や行動を変えないと、出向しても何も得られない」ということをご指摘いただきました。出向後は千葉さんに毎日のようにランチをご一緒していただき、とても丁寧にご指導いただけたこともあり、少しずつ本心から楽しめるようになったと感じます。思い返すと、働き方、服装、コミュニケーションなど、全て変わりましたね。チャットで「様」を付けるのは堅苦しいからやめた方が良いなど、カジュアルにコミュニケーションを取りながら距離を詰めていくということも教えていただき、実際にどんどん仕事がやりやすくなる実感がありました。

ーー大手企業を経験して良かったことは何ですか

出向という機会をいただけたことや、契約社員という形で大手企業の側から仕事を見る機会をいただいていることは良かったことだと思います。また、大手企業に入ると半年間くらいの丁寧な研修があって、そこでビジネスパーソンとしてのお作法を学べることはメリットの一つだと思います。国際興業で足腰を鍛える時期があった後、DRONE FUNDへの出向や、エアロネクストというスタートアップへの転職があったことは、順番としてとても良かったと感じています。私は学生時代、公務員になるか大手企業に入るかという比較で考えていたのが正直なところです。今、スタートアップに転職して180度世界が変わっていますが、新鮮な日々を過ごせていると思います。

法規制や技術よりも大きな壁は、社会に受容されること

ーーエアロネクストでの担当されている業務について教えてください

エアロネクストはまだ15名の小規模な組織です。私は開発部の営業企画という役割で、メインはNEXT DELIVERYを担当しています。小菅村を中心としたドローン配送サービスを軸に、セイノー(セイノーホールディングス:西濃運輸などの持ち株会社)さんとの事業開発を担当しています。週の半分くらいは小菅村にお邪魔して、現場オペレーションの磨き込みをしたり、ドローンパイロットをやることもあります。自治体の営業も担当しています。おかげさまで、小菅村のプロジェクトをメディアにも取り上げていただき、多くの自治体さんからも問い合わせをいただけている状況です。先日、北海道の上士幌町と連携協定を締結させていただいて、山口県のプロジェクトにも採択が決まりました。それらのプロジェクトの提案書作成や、提案が通った後の飛行計画の作成、アライアンスの調整、プロジェクト管理も担当しています。

小菅村でのドローン配送

上士幌町、セイノーHD、電通、エアロネクストがドローンを含む次世代高度技術活用による「持続可能な未来のまちづくり」に向けた包括連携協定を締結

ーーどのような社会課題に取り組んでいるのですか

おかげさまで小菅村でのプロジェクトは評価をいただけていまして、ポイントはセイノーさんとの連携だったと思います。ドローンを活用した実証実験というのは多くの会社が取り組んでいますが、地域に根付くまでは中々できておらず、ドローン業界全体の課題だと考えています。当社はセイノーさんと小菅村にしっかり入ってやっていくということを決意し、地域の課題を住民の方一人ひとりにヒアリングするところからスタートしました。地域に根づいた課題解決型プロジェクトができている点が、業界の中でも当社の特徴ではないかと思います。ドローンの普及に法規制が大きな壁と言われますが、一番大きな壁は社会受容性の壁だと捉えています。つまり、住民の方の理解や協力です。小菅村では良い形で進んできており、ドローン配送がとても楽しみです、という言葉もいただいています。

このように一つの地域に継続的にサービス提供をしているという点が、他ドローン関連企業との違いです。さらに私たちは回数にこだわってドローン配送をしており、約182回ほど飛行実績があります(2021年10月時点)。これは国内トップの数字です。また、小菅村で自社の機体をレベル3(有人地帯での目視外飛行)の環境で配送するということもチャレンジしています。セイノーさんと連携することによって、どういった時間軸、どのようなシステムを使って配送すればいいのかということを、それを開発にもフィードバックをして、ワンチームになって進めています。その地域での貢献を追求できることがエアロネクストで仕事をする意義で、他社ではできないところだと思います。

ドローン配送の社会実装を進める山梨県小菅村でドローン配送100回達成記念 吉野家のできたて「牛丼」を小菅村の皆様へドローンで提供 〜一般の方が“空飛ぶ牛丼”を受け取るのは今回初〜
https://aeronext.co.jp/news/flyingbeefbowlinkosuge/

ーー今後の展開について教えてください

当面は過疎地域に展開をしていきたいと考えています。小菅村もまさにそうなのですが、山口県、福井県、北海道、いずれも、やはり買い物難民、医療難民、インフラ老朽化、こういった社会課題が深刻な状況になっています。一方、過疎地に新たなサービスを展開していくプレイヤーはなかなか出てこないのが現状です。そんな中で我々は、自ら過疎地にインフラをつくりにいくというある意味無茶なプロジェクトを展開しています。セイノーさんの中に、地域の物流のラストワンマイル問題に取り組んでいる会社さんがあります。まずは地上でラストワンマイルの効率的な物流を構築した上で、ドローンの機体のスペックが向上した時に、全てドローンで置き換えていくというストーリーを描いています。

上士幌でのドローン配送実験

ーー転職して貢献できていると感じている部分はどのような点でしょうか

投資家や企業との連携を加速していくというミッションは、出向時代の経験も含めて経験が生きていると感じます。私はもともと地図や測量が本業です。地域にドローンを根づかせることによって、配送用のドローンがインフラ点検や森林観測をすることで、外部に委託していたコストをドローンによって削減するということにも興味があります。今後小菅村のような地域でドローンが根づいた後には、配送以外の手段も企画をしていきたいと思っています。

ーー個人的な思いと今後のキャリアビジョンについても詳しく教えてください

日本は自然災害が多く、現場に迅速にドローンで駆けつけるということが人命救助に繋がります。小菅村のような地域にドローンを溶け込ませて、すぐにいつでも行けるような状況をつくり出すことに取り組んでいきたいです。今27歳で、あと数年はドローン業界が一番盛り上がる時期だと思っています。20代のうちは、がっつりとドローン業界でやっていきたいなと思っています。30代以降については正直全く考えられていませんが、その時に満足して働けているように、目の前のことに全力で取り組みたいと思っています。

ーー読者の方にメッセージをお願いします

私も最初不安で憂鬱な日々を過ごしていましたし、気持ちが高まって決断したとはいえ、エアロネクストに転職した当時は、本当にちゃんと仕事ができるのかとか、ついていけるのかの確信はありませんでした。私の場合、多少近い業界に在籍していたということと、ネットワークを築けていたことが自信にもなり、楽しく働けていますが、誰もが何かしら活かせること、一方で学ぶ必要があることがあると思います。まずがそこを認識することが大切ではないでしょうか。転職してみてスタートアップの意思決定のスピードには驚きますし、自分がやりたいことを大手では考えられないスピードでできるという点は非常にやりがいに感じています。

ドローン業界は、まだまだ立ち上がったばかりの産業ですので、ドローンの知識などは無くても問題ないと思います。とにかく何かやってみる精神というか、千葉さんからアドバイスをいただいた「60%くらいまでは誰でも到達できるから、そこまではとにかく何でも考えずにやる」というスタンスは大切だと思っています。それをチームで70%、100%、120%にする方法を考えれば良いですし、そういう意味でエアロネクストのチームワークは素晴らしいと思います。フットワーク軽く何事にも前向きにチャレンジできる人と一緒に働きたいなと思っています。不安なお気持ちは誰もがあると思うので、私でよろしければ、お気軽にまずはお話しできればと思っています。

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