Top / Social Impact / 【株式会社Sales Marker/ 陳 晨氏】既存の枠を越え、世界を前進させるために。全ての企業、事業を成長させるGrow All Businessへの挑戦。
「商談数10倍」「サービスリリースから1年で8.4億円の資金調達」。時に営業DXの代名詞として、時に有望スタートアップとしてSales Markerというサービスまたは会社名を耳にしたことがあるビジネスパーソンは多いだろう。
しかし、様々なメディアで目を引くタイトルで取り上げられるなど一見分かりやすいその反面で、同社が目指す社会課題の解決や、組織運営の実態はほとんど知られていない。
パーパスで掲げる『全ての人と企業が、既存の枠を越えて挑戦できる世界を創る』はどのようにして生まれたのか。実現に向けた構想とその障壁は何か。創業メンバーの1人であり、取締役CTOとしてプロダクト成長をリードする陳氏にお話を伺った。
陳 晨(ちん しん)さん
アメリカワシントン大学セントルイス校修士課程終了後、LINE株式会社に新卒入社。全社横断ビッグデータプラットフォーム構築プロジェクトに従事後、日本マイクロソフト株式会社に転職。AI&ビッグデータ部門にて世界中のお客様に対しシステム設計から開発、運用までシステム全般をサポート。その後株式会社スタンバイにてリアルタイム分析基盤の構築をリードする。テクノロジーの力で社会課題の解決に貢献すべく、株式会社Sales Marker(旧:CrossBorder株式会社)を共同創業し、CTOとしてインテントセールスSaaS「Sales Marker」開発のリードおよびグローバルエンジニア組織の立ち上げ・全体指揮を行う。
「挑戦をもっと気軽にできる社会を実現したい」
多くの変化を受け入れても、変わらない軸がある。
–これまでのご経歴を教えてください–
日本で生まれ、中国で育ち、大学院時代のアメリカ留学を経て、就職は日本という選択をしました。ファーストキャリアはLINE株式会社で、データエンジニアとして仕事をしていました。その後、LINEではオンプレミスの開発環境であったこともあり、クラウド技術を身につけたいという背景で日本マイクロソフトに転職しています。ソフトウェアエンジニアとして目的としていた経験を積むことができ、小笠原(羽恭/代表取締役CEO)をはじめとしたメンバーとともに当社を共同創業したというのが簡単な経歴です。
–共同創業の背景をお聞かせください–
私と小笠原(羽恭/代表取締役CEO)、渡邉(駿也/取締役)の3人は、学生時代のインターンシップで知り合ったという関係性です。私の中でインターンシップ時代にみんなと一緒にゼロからアプリをつくり始める体験が何より忘れられない、本当に楽しい経験として強烈に記憶に残っていました。2人も同じような感覚を持っており、新卒では別々の道を選びながらも、みんなでもう1回何かしらのサービスをつくりたいよねと時々連絡を取り合ってはそのような話をしていました。転機はコロナウィルスが流行した際で、苦しんでいらっしゃる方を助けるサービスを開発できないかという思いのもと、各々が本業以外の空いた時間に協力しながら開発したデリバリーサービスアプリが、アジアの大会で総合優勝という評価をいただけたことです。いつか起業も選択肢にという漠然とした希望が、私たちならできるという自信に変わり、そこに荻原(慎太郎/取締役COO)も加わって4人で具体的な起業準備をスタートさせることになります。荻原はキーエンス、スタートアップのVoicyで営業を経験していますが、彼に話を聞いてみると日本における営業という仕事は30年前と大きく変わっておらず、非効率な実態も見えてきました。営業の役割や仕事内容を深掘っていった結果、生まれたのがSales Markerの構想で、運よくスムーズに出資の話も決まり、創業したという経緯です。
–創業時はCross Borderという社名でした。込められた思いや現在の社名に変更した背景をお聞かせいただけますか–
元はCross Borderという社名で、既存の枠にとらわれない社会を実現していきたいという思いを込めていました。これは創業メンバー4人全員が、自分の人生やキャリアを型にはめずに歩んできたという点で共通していることに由来します。小笠原はエンジニア出身ですがビジネス志向を強めてコンサルファームに転じています。私と渡邉は世界中を転々として日本に戻ってきておりこれも珍しい部類だと思いますし、萩原に関しては収入面で言えば間違いなく日本でトップクラスのキーエンスに新卒で入社して成果を出していましたが、2年目になって「音声という誰も売れないものを売りに行きたい」と言ってスタートアップに飛び込んだような人間です。つまり一般的な感覚からすると何でそんなことするのか、と思われるようなキャリアなのですが、それぞれが自分にとって挑戦したいテーマがあってキャリア選択をしてきています。一般的ではないということが意味するのは、それだけ挑戦がしづらい世の中ということとも受け取ることができます。そこへのもどかしさを感じていたので、「挑戦がもっとできる社会をつくりたい」という思いからCross Borderという会社名で創業しました。そのような経緯もありCross Borderという社名に思い入れを持っていたものの、サービスであるSales Markerが有名になりすぎて、会社名からすぐにサービスを想起いただけないというシーンが増えていきました。Sales Markerというサービスをつくっていると言うと「あのSales Markerの会社なのですね」と言っていただける頻度は日を追うごとに増えましたが、会社名とサービス名のギャップが生じていたのです。今後はそれが事業拡大のネックになると捉え、2023年12月に、社名もサービスもSales Markerに統一することで、効率的に知名度を高めブランディングができると判断し名前を統一しました。
大事なポイントですので補足をすると、社名は変えていますが『全ての人と企業が、既存の枠を越えて挑戦できる世界を創る。』というパーパスは創業当時の思いのままで、多くの変化を受け入れてきた当社において、根本となる部分は変わっていません。
興味関心を示すインテントデータは、日常をどう変えるのか。
–世の中に感じていたもどかしさがきっかけとなっており、社会課題の解決を強く志向されている会社だと感じています。インテントセールスという概念を打ち出していますが、この点について詳しく教えてください–
まず社会課題に関してですが、先ほどご紹介しました通り、私たちはもっと挑戦できる世界をつくりたいと考えており、そのためには、事業成長を支えることが不可欠です。日本の多くの企業において、グローバルで比較すると直近20~30年程度、事業成長が停滞してしまっている企業がほとんどです。既存事業を維持し、売上を落とさないことを起点に発想すると守りを重視した運営になり、これは日本の情勢における経営の合理性という観点では正しいことも多いと思いますが、そもそも事業成長ができていない、新規事業を打ち出してもコミットしきれず伸び悩むと、新しいことをやるのが億劫になり、いずれ挑戦しなくなるというスパイラルに陥ります。人でも同じことが言えて、自分が何かしら実現したいアイデアがあったとしても、失敗が怖くて起業できない。今の会社で頑張った方が良いという選択をする人がほとんどではないかと思います。そして成長が停滞することの真因は、どうやってこの事業を立ち上げたらいいのか分からなかったり、どうすればビジネスを伸ばせるのか分からなかったりすることです。それを解決するために、私たちは“Grow All Business”という目標を掲げています。言葉の通り、全ての企業、事業を成長させるという目標です。当社が最初に打ち出したのは売上を上げるサービスであるSales Markerで、おかげさまで多くの企業様の営業活動に活用いただいています。その一方で気づいたのは、Sales Markerは基本的に潜在顧客との商談を獲得するサービスになりますが、商談を獲得するだけだと“Grow All Business”という目標には届かないということです。そこで、次に打ち出したSales Bolt(現:Sales Marker Bolt)というサービスで商談を顧客に変え、クロージングを支えるというプロセスに染み出しました。商談も足りていて、クロージングもできているので顧客が増えて売上も上がります。でもまだ十分ではありません。当社も同じ状況ですが、次にボトルネックになってくるのは組織で、組織をつくるサービスとしてRecruit Markerをリリースしました。組織を充実させることができた先にマーケティングに目を向けることで、さらなるチャンスを獲得することができますので、そこはMarketing Markerでカバーします。新規事業におけるセグメンテーション、認知ブランディングの強化等の課題解決を支えるサービスです。
–セールスという領域に閉じず、経営を支え会社を成長させることがゴールなのですね–
Cross Border創業時に考えていたことと同様で、人が挑戦できる、既存の枠を超えた大胆な挑戦を誰もができる社会をつくりたいと考えています。インテントはいわゆる、何をしたいのかという“Will”を表すデータだと捉えていただくと良いのではないかと思います。人がやりたいと思うことは、基本的に何かしらの行動に表れます。当社はウェブ上の行動を捉えることによって、この企業が何をやりたいのか、どのような課題を感じているのか、あるいは今後どういった課題にぶつかる可能性が高いのかを、インテントデータを駆使して分析しています。
今はまだ行動からインテントデータを吸収して、どのような課題を持っているのかを示唆するという形で、主にはセールス場面で活用していますが、インテントの概念は、あらゆる面で発展する可能性があると思っていますので、セールスの領域に留まらず、HRやマーケティングなども含めたもっと大きな文脈の中心に据えて、事業を運営していきたいと考えています。
–インテントデータの活用にあたってどのような障壁があるのでしょうか–
行動履歴は様々な分野で活用されていることはご存知の方も多くいると思いますが、インテントデータはそこから思考を類推して潜在的な課題を示唆するというものですので難易度は非常に高いです。過去にも挑戦された事業者や個人もいたのではないかと思いますが、表に出てくることはありませんでした。最も大きな障壁は行動データのノイズで、人は常に合理的にやるべきことから逆算して行動している訳ではありません。分かりやすいのであえて個人の例を挙げると、例えば娯楽はふと思いついたときに検索することが多く、客観的に説明できる行動ではない。その必要すらないことがほとんどだと思います。インテントの根拠となる行動データが必ずしも未来につながらず、それがノイズなのかそうではないのか判別することが難しいのです。企業を人の集合体と考えて何に課題を感じているのかという分析をすると、そのノイズがとんでもない量で発生するということになります。それを取り扱える企業が今までいなかったため、インテントデータを初めて実用化に向けて使い始めたという点はSales Markerの大きな強みになると考えています。
–事業戦略や優位性にも触れてご説明いただきありがとうございます。今後の事業戦略についてもう少し詳しくお聞きできますか–
私たちが目指していくのはオーケストレーションである、という点にフォーカスしてご説明させてください。10年前くらいまでは1つのサービスに集中して、そこに特化した課題解決をしようとするのがサービス設計の主流でした。現在はAIの精度向上とともに、サービスのバリエーションが広がり、エンジニア1人あたりの開発効率が飛躍的に高まっていることから、開発の可能性がとても増えています。結果としてサービスが乱立する時代となっていますが、単一サービスで何かしらの価値を提供できたとしても、基本的にお客様の活動がそのサービスだけで完結することはあり得ません。それにも関わらず、実態としては部門ごとに色々なサービスを使っていて、しかもそのデータが分断されているという事象が発生することは珍しくないのです。連携しようとしてもうまく連携できないことや、正しいデータを扱うために、人力で集計、分析をするということが起きているということは感覚的にご理解いただける方が多いのではないでしょうか。解決のためには、単一サービスで物事を解決していくのではなく、サービスを融合させるコンパウンドなプラットフォームを提供することが必要で、それによって部門間の連携を強化して、もっとユーザビリティの良い形で、経営課題を解決するサービスの提供が不可欠です。単一サービスではなくコンパウンドシステムとして、様々な角度からお客様の経営を支えていく。そして当社が提供していない領域に関しても、オーケストレーションという立ち位置を取ることで、他社とも連携しながら本質的な顧客課題を解決できるというポジショニングを取っていきたいと考えています。
–Sales Markerを中心とした経営支援体制ができあがるということですね–
これが実現できると、Sales Markerは事業成長を支えるプラットフォームになるということになります。例えば、どこかの企業のエンジニアが、こういうものが世の中に欠けているのではないか、というアイデアが浮かんだとします。今までは、自分で試してみたけどうまくいかなかったから、本業に集中しようといった形で、アイデアが出ては消えていくという状況でした。このアイデアをまずSales Markerプラットフォームで試すことで、市場ニーズがあるのかを把握することができます。ニーズが存在するということが分かったら本腰を入れて開発して、またSales Markerを使って売上に変える。売上が立ってきたら、組織づくりに着手して次はブランディング…ということが可能になります。開発に関しても“Product Marker”という構想を持っておりますので、ワンストップで事業成長を支える存在になれるのではないかと思います。一人のアイデアから始まったものが事業になり、ビジネスになり、それが成長していく。そのような未来に貢献したいと考えています。
–SaaS企業の一つの目標であるT2D3の実現に向けても順調に推移されています。ここまで成長する自信はあったのかなど感想をお聞かせいただけますか–
過信ではなく創業当初から実現できると思い続けています。我々が目標を掲げない限り目標には達せないと思っており、常にT2D3以上の目標を掲げていたからこその現在地だと思っています。精神論ではなく言霊はあると信じていて、意識に影響し行動が変わります。ご質問いただいた感想についてですが、特段感想としては持っておらず、目標として掲げたこと、やるべきことをやるべきタイミングでフルコミットしてきたということに尽きると思います。私たちは常に未来を向いていますので、あえて過去の振り返りをそこまでしません。そして5年間のロードマップの中でまだ3年です。ご質問いただいて、確かに結果としては好意的に受け取っていただける数字なのかもしれないと思いますが、重要なのはどうすれば次のダブルを実現していけるのかを考え、行動することです。気を引き締めて事業成長と未来の目標達成に向き合っていきたいと思います。
–昨今、AIがSaaSを吞み込んでしまうという話も耳にします。SaaSマーケットをどう見ているのか。そして事業の成長を相対的に見れば少なくとも順調な部類とした時に、要因をどう捉えていますか–
私も一定数のSaaSビジネスは、AIをはじめとしてほかの手段に代替されていくと思っています。ただしAIに関して、それが実際にどのようなビジネスシーンで活用されていくのかを語れる方は極少数です。AIの技術が進化しできることが広がっているのは間違いありませんが、ビジネスにおける用途まで進化しているのかと言えばまだその段階ではないと思いますし、今後も全てをカバーするということにはならないと思います。
その中で私たちがどうやって競争優位を保つのか。どんなに強いAIが出てきても、重要になってくるのはデータです。データだけは、どんなに強いAIがあっても我々が保有している独自的なデータがある限りそれを盗むことはできず、データが無ければ同じことは決してできません。見方を変えれば、強いAIが出始めているからこそ、我々のデータとそれらのAIを掛け合わせることによって、もっとイノベーティブで大胆なことを実現できると思っており、私は追い風だと考えています。
バリューから紐解く、Sales Markerらしさ。
–ここまで事業のことを中心にご説明いただきました。組織という観点からSales Markerについてお聞かせいただけますか–
全てはバリューに集約されますので、その点からカルチャーや求める人材像についてご紹介します。ホームページにある5つに加えて、社内向けに1つ、合わせて6つのバリューで構成されます。1つ目がExcellent。これは求める仕事の水準で、私たちが目指すのはGoodではなくExcellentである。Excellentを常に追い求めていくという意味です。2つ目がSpeed、3つ目はClient Growthで全てのお客さまの成長に貢献していこうというものです。4つ目がDisruptorで、これは少し補足が必要かもしれません。直訳すると破壊という意味で、アメリカのスタートアップ界隈では、改革や変革という意味で用いられます。仮に昨日決まったことだったとしても、今日競合が何かしらプレスリリースを打ち出した。その一言で、我々は変わるべきで、そうでなければグローバルな競争環境では絶対に勝てません。Sales Markerは変わることをためらわない、という意志が込められています。5つ目はRespectで、我々にとって価値の根幹は人にあって、お互いのリスペクトがないと組織は成り立たないと考えています。急成長の組織においては、多くのものがとてつもないスピードで変化していきますので、人と人とのリスペクトがないと組織は一瞬で崩れてしまいます。Respectは最初にバリューを定義した頃からずっと引き継がれている大切なカルチャーです。6つ目は社内向けで、Sleepです。健康が一番大事なことですので、しっかり寝て万全の状態で働きましょうということを示しています。これらのバリューに合致し、また共感している人が当社内には多いと思います。
–企業によってバリューを評価制度に組み込むなど、何らかの形で事業運営に接続しているケースが多いと思います。御社の場合はどのような形で反映させているのでしょうか–
はい。人事制度についてはコンサルや色々なベンダーさんのサービスを検討したのですがフィットするものが無く、私が原案をつくり固めているところです。バリューに沿って行動指針を定義し、バリュー評価をつけるという運用で、Sleepを除き対外的にオープンにしている5つのバリューが評価対象になっています。
–CTOでありながら人事制度まで担当されるなど全方位で活躍されています。陳さんが成し遂げられたと感じること、成果と捉えているものをお聞かせください–
まだ道半ばではありますが、ここまで事業が伸び、仲間が増えたことは社員全員の頑張りであり、ステークホルダーの皆さまの支援の賜物だと思います。その前提で、私個人のことをお話すると、基本的に私は会社の全てのことに責任があり、無関係なことは無いと考えています。CTOの「T」はテクノロジーを指すもので、CTOとしてそこに注力している方が多いとは思いますが、私はセールスもしますし、カスタマーサクセスも携わります。組織開発、採用、バックオフィス、あらゆるところにコミットしてきたと思います。その中で特に貢献できたと感じるのはSales Markerをはじめとした4つのプロダクトの根本となるシステムの立上げと、カルチャーの醸成も含めて組織基盤を整えるという点での成果です。
–これまでの組織づくりはどのような変遷があったのでしょうか–
当社は創業が2021年、正社員の採用を開始したのが2023年です。2年間で180名ほど正社員が増えているのですが、ここまで短期かつ急激に人が増えると経営ボードや会社として明文化しているカルチャーとはまた別の意味合いの風土、空気感のようなものも生まれてきます。バリューは今回で二度目の刷新で、創業当初は9つのバリューがありましたが、浸透しづらかったり形骸化されてしまっているという背景もあって3つに集約したのが一度目の刷新です。旧社名のCross Border時代は「Respect」「For All」「Client Growth」の3つのバリューで運営し、事業成長、組織変化の中で「Excellent」「Disruptor」を加えるなど意図的に変化を促進し、現在の6つのバリューに辿り着いたという形です。人が増えて色々な考え方、バックグラウンドの人が入ってくる際に、Sales Markerらしさとは何かが定義されていないと、組織の意思決定が遅くなり、同じ方向を向いて協業するということができなくなりますので、この点はこだわってきました。仮に経営陣がいなくても、何かしら物事を判断するときは、こっちの指針に沿った行動をとりましょうと掲げることによって、明確に社内の動きは変わったと感じており、今日も社員同士で「間違いなくGoodのクオリティだと思う。でもExcellentには足りないからそこを目指そう」というコミュニケーションを取っているのを耳にしました。今までもこれからも、事業フェーズやそれに合わせて変わっていく組織の状態を感度高く捉えることで、何を浸透させるのか、何を変えるのかを決めて適応させていきたいと考えています。
–今後も組織を拡大していく方針とお伺いしています。採用に向けて求める人物像を教えてください–
大前提としては先ほどご紹介した6つのバリューに合致していることで、そうでなければ入社しても面白くない、ギャップを感じることが多いと思います。急成長し物事もどんどん進み変化します。それは前向きなものだけではないので、困難で投げ出したくなることもあります。まずそのような環境でチャレンジをしたいと思えるかは分岐になるのではないでしょうか。また、このインタビューでご説明しているカルチャーが永続的なものだとは考えていませんので、自分自身を適応させ、学習し進化し続けることという生き方をポジティブに捉えられる方が向いていると思います。加えて、Sales Markerというプロダクトの目指す姿に共感いただけることも不可欠だと考えています。私たちはどこまでいってもSaaSの企業で、インテントがその中心にあります。まずこのSales Markerというサービスがどのような価値があり、どこに向かっているのかに興味を持っていただくこと、そしてご自身がコミットメントしたいと感じていただくことが重要なのではないかと思います。
–例えば3年スパンなど時間軸を長くとった際に、採用に関するお考えをお聞かせください–
私たちは変化が前提であり、外部環境を見てもこれだけAIが盛んになり世の中が動いていますので、遠い未来の設計はしないようにしています。具体的には1つだけ、現社員が240名程度で半年後には300名規模の組織にしていきたいということは明確になっています。1年後は具体的になっていませんが、いまの倍くらいの組織規模になるのではないかと思います。そこから先は、我々の事業がどう進んでいるのか、マーケットがどう変化していくのかに大きく左右されます。日々新しいAIが生み出されていますので、人の労働生産性は限りなく高くなっていきAIが代替できる業務も増えていくはず。と考えると、人数にとらわれず組織成長ができるのではないかという思いも個人的には持っています。したがって、自社採用についても柔軟性を担保して、変化対応がしやすい組織をつくっていく必要があると考えます。
–RPOという立場でご一緒する中で本当に魅力的な会社だと感じます。陳さんから見てこの会社で働く魅力や転職を検討する方々へのメッセージをお聞かせください–
私は過去転職する際に、一緒に働く人はどんな人なのか、次の環境で何を得られるのかということを重視していました。Sales Markerにおいても、優秀な仲間に刺激を受けながら事業をつくっていく毎日が楽しくて仕方ありません。ですので、同僚、仲間の存在は当社の魅力だと自信を持って言うことができます。もう少し説明しますと、当社の社員のスタンスとしては伸びている事業に入れば成長できるという発想ではなく、自分がその事業をもっと伸ばしてやろう、牽引して変化を起こす側であろうと考えています。1人1人の熱量が高く、当事者意識が高い。そんな環境を望まれる方は是非選択肢としてお考えいただければ嬉しく思います。
もう1つ特徴的なのは、グローバルな組織であることです。エンジニアは60名いて、その出身は23か国に渡ります。コミュニケーションは全て英語、しかも育ってきたカルチャーがまるで異なり、いつも色々な考えがぶつかり飛び散らかっている環境ですので、言語を超えてコミュニケーションを取っていくということが求められます。ビジネスサイドは日常では日本語でコミュニケーションを取っていますが、それでもエンジニアとの意思疎通が必要な場面はありますので、グローバルの環境に関心があるという方は向いているのではないでしょうか。
–多様性は魅力である反面、事業運営や業務推進上の難しさを感じる場面もあるのではないでしょうか–
そこは仰る通りで、実際に問題が起きたこともあります。有名な話ですが日本と比べてヨーロッパはダイレクトなフォードバックを好むということは実際その通りですし、リーダーシップという言葉からイメージするものが真逆であるということもあります。ですので、例えば私の発言に対して、一見全く方向性が異なるコメントで溢れるという光景も珍しくないのです。この際に重要なのは、お互いが育ってきた文化的な背景や、自尊心の源泉を予め知っていることだと思います。私も書籍だけでなく意図的に対話の時間を多く取って、この人はこういったバックグラウンドがあるからこの物言いをしたんだなとか、攻撃的な性格なのではなく、自分の意見や主張をストレートに伝えることが求められる環境で培われたものなのだろう、ということを捉えながらコミュニケーションを取っています。そのプロセスを踏まないと、それぞれがExcellentを目指して仕事をしているのに、不要な誤解を生んで仕事が進まない、最悪の場合は、それが理由でパフォーマンスが落ちて不本意な形で退職が発生するということもあります。「まずは相手を知ること」。これはプロダクトに関わる全社員が集まるミーティングでも私から発信していて、生まれ育った国や宗教的な価値観などの違いを乗り越えるために、全員が大切にしてほしいことだと考えています。
–これまでお話いただいた内容と関連、一部前後する部分もあるかと思いますが、RPOをご利用いただいた背景をお聞かせください–
One Workさんとのご縁は正社員の採用を始めた2023年に遡り、急激に事業が成長すると同時に組織拡大の優先度が高まっていたタイミングです。とはいえ経営ボードとしての役割はもちろん、プロダクト開発、営業など実務の工数も大きく、基本的にはほとんどが未整備で、初めてのことばかり起こるスタートアップですので、採用に回す手が全く足りないという状況。One Workさんにご支援いただく以前より、業務委託の方に入っていただくなど打ち手は講じていたものの、当社で求めるクオリティ、スピードとは乖離を感じており、有効な対策は取れていませんでした。その中で他のスタートアップでの実績もあり、組織的な体制を取りながらも細かい部分も柔軟に支援いただけるOne WorkさんのRPOは有効な手段ではないかと考え、ご支援いただく決断をしました。結果として当時抱えていた採用ができない、採用に回す工数がない、採用しても育成する時間がないという課題を一つ一つ解消していくことができ、非常に感謝しています。
–最後にOne Workのサービスに対する感想、今後の期待をお聞かせいただけますか–
当社は2023年、2024年いずれも急成長スタートアップランキングにおける社員増加率のランキングでトップ5に入っており、それが全てではないかと考えています。人事もおらず創業メンバー4人とも採用を経験したことが無い中で、最大限のスピード感で採用、組織づくりの支援をいただいたと思っていますし、One Workさん、特に榊原さんが主体的に社内にどのような人材が必要なのか、どのようなカルチャーづくりが必要なのかというところまで入り込んでいただいて、社内の一員という感覚でご一緒していました。2023年から2024年までご支援いただいたと思いますが、当時の事業成長、組織成長、売上成長はOne Workさんに“おんぶにだっこ”だったと言っても過言ではなく心から感謝しています。現在は人事組織も立ち上がって参りましたので、できる限り内部で進めようと考えていますが、それでもスポットで急激に採用ニーズが高まる場面や、例えば資金調達後などに組織拡大のアクセルを踏むということは考えられますので、その際はご支援いただきたいと考えています。何社かRPOのご支援をいただいた経験がありますが、表面的なオペレーションに終わってしまったり、当社の理解が浅いまま物事を進めてしまってかえって非効率だったということもありました。相対的にもOne Workの実績が優れ信頼しておりますので、その際はご協力の程よろしくお願いします。
【参考記事】
■SaaSユニコーン企業”T2D3”の2倍の成長速度を達成:
https://sales-marker.jp/corporate/3rdanniversary/
■株式会社Sales Marker、隠れた優秀層をタイムリーに採用できる国内初インテントリクルーティングSaaS「Recruit Marker」をリリース〜個人のサードパーティインテントデータを扱わない、セキュアなリクルーティングを実現〜:
https://sales-marker.jp/corporate/post-6700/
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【インタビューアー】
人事部 榊原 有衣
BPO企業で人事採用や部門SV、ソリューション営業の経験を持つ。エンプラ企業向けに業務標準化サーベイやDX導入のハンズオン支援も行う。2020年には地方工務店で人材戦略に基づく採用・教育・評価制度の設計を行い、2022年にOne Workに参画。スタートアップ向けRPOとして採用組織の垂直立ち上げやオペレーション構築、リクルーティング業務を実施。現在、人事として活動中。