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10年後の課題を解決するという志。社会を黒子として支えるひとを、その黒子としてテクノロジーで支える。

今や世の中のあらゆる場面で、画像データを取得し、情報を解析することがスタンダードになっている。株式会社スカイマティクス(本社:東京都中央区)は、ドローンにより撮影された画像から地形データを生成することはもちろんのこと、スマホにより撮影された画像で、米の等級判定まで行う画像データ解析プラットフォームを提供するスタートアップだ。「未来の課題を炙り出すからニッチを独占できる」と語る渡邉 善太郎社長は、三菱商事を経て大企業がやらない社会課題に向き合うことを決断した。創業から5年経過し、会社が成長しても「社会を黒子として支えるひとを、その黒子としてテクノロジーで支える」という想いは変わらない。渡邉氏が挑み続ける社会の不と、その過程で不可欠な組織づくりへの熱意について、同社を支援するDRONE FUNDキャピタリストの蓬田 和平氏とともにインタビューを行った。

渡邉 善太郎さん
早稲田大学機械工学部で流体工学を専攻。2002年三菱商事に入社し、宇宙事業領域にて衛星画像販売事業やGIS・位置情報サービス事業の新規事業立上げ、子会社のM&Aに従事。事業売却及び売却先への出向等も経験し、小型衛星企業とのパートナーシップ契約の締結を担当する過程で、衛星だけでは解決できないリモートセンシングの世界での起業を志し、2016年に株式会社スカイマティクスを創業。

蓬田 和平(ヨモギタ カズタカ)さん
銀行、外資広告会社、リクルートなどを経て、PEファンド傘下でIoTデバイス開発のスタートアップにてCOOを務めた経験を持つ。

DRONE FUNDではソーシング、投資先のハンズオン、広報PRなど幅広く担当。

取り残される3K業界を4Kにアップデートしたい。
「快適」「効率的」「格好いい」「稼げる」産業へ。

ーーどのような想いで創業されたのでしょうか。

(渡邉)「社会を黒子として支えるひとを、その黒子としてテクノロジーで支える」という思いが原点です。学生時代を思い返すと、食品会社やコンビニに就職する人はいても、農家になった人はいませんでした。あるいは、不動産ディベロッパーやスーパーゼネコンに入社しても、測量士になりました、という声はほとんど聞きません。食べ物を売る、高層ビルを建てる、という前に農作物を作る人や土地を測量する人が必ずいます。このような、社会を黒子として支えるひとを、さらに自分たちが支えられるようになりたいという思いがあって、今もそれは変わらずに、新入社員を迎え入れたときにも必ず話をしています。仕事としての優越とかはもちろんなく、一方で人が減っている業界というのはどうしても3Kという言葉と近い部分があるのは否定できない場合もあります。なぜそこにサービスが無いかと言えば、簡単には儲からないからで、大企業含めて積極的な投資やサービス提供がされず、最先端のテクノロジーで変えようとしないのでさらに取り残されるという構図です。私たちはそのような産業をリモートセンシングサービスで3Kから4K、つまり「快適」「効率的」「格好いい」「稼げる」にアップデートしたいと思っています。

ーーどのようなサービスを提供しているのでしょうか。

(渡邉)人が受け取る情報の8割は視覚情報という話はよく出ますが、簡単に受け取れないのが空からの情報です。また、有益な画像でも、何百枚、何千枚あると閲覧、判読、管理に膨大な労力と時間を要します。この両者に着目した画像データ解析プラットフォームを提供しています。ドローンを利用する人が増えていますが、ドローンに限らず、スマホ、360度カメラや人工衛星などで撮影された画像をWebサービスやスマートフォンのアプリに取り込むことで解析が可能です。農業向けの『いろは』シリーズ(月額1,000円〜)と、産業向けの『くみき』シリーズ(月額3,000円〜)が柱になっており、月額利用料のSaaS型のモデルで提供しています。元々は地形データの自動生成からビジネスをスタートさせていますが、ユーザーにとって地形データが自動生成されることは目的ではありません。生成して何かやりたいことがあるはずで、そこにユーザーの課題を先回りして見つけ提案していきたいと考えています。例えばドローン計測サービス「くみき」では、月3000円で利用できると、大手企業から10名前後の社員数の中小企業まで幅広く引き合いをいただきます。ベーシックなサービスを満足度高く提供するということも大切ですが、例えば、砂防現場の石を見つけるという使い方をしているのが分かるとすると、そういう尖った使い方に専用のアプリを提供してマネタイズするということもできるようになります。『いろは』と『くみき』はビジネスとしてある程度立ち上がったので、今後は防災、電力、点検などの分野に広げていきたい。これらの分野はドローンや衛星だけでは難しく、総合力が試される分野ですが、これまで培ってきた事業ノウハウ、テクノロジーを駆使して解決していきたいですね。

いろは:プロダクトサイト
https://smx-iroha.com/

くみき:プロダクトサイト
https://smx-kumiki.com/

苦労の連続だった組織づくり。変わらないものと、変えたもの。

ーースカイマティクスで働く人や組織について教えてください。

(渡邉)創業から5年経ち、社員も50名弱の体制になりました。私が5年前、30代後半で起業しており、創業時はその前後の年代が多かったのですが、今は、20代や30代のメンバーも増えてきて60%以上を占めています。大企業や大企業のグループ会社を経験してきた社員も多く、全員がプロフェッショナルで活躍するスタートアップのスピード感と、組織人としての規律性をもった大人のベンチャーだと思います。組織としてはRaaS事業部(営業、マーケティング)に約15名、プロダクト開発本部(研究開発、製品開発)に23名、コーポレート本部(管理部門)に6名(2021年9月末時点)在籍しています。当社のカルチャーについてこれまでの組織拡大のプロセスとともに少しご紹介します。いまコーポレートバリューを5つ設定しているのですが、初期メンバーは2番と4番を特に重視して探しました。

1,未来の課題を、解決する    Future based innovation
2,オーナーであれ。プロであれ。  Ownership&professional
3,即行動、即改善。成否より成長。 Try,retry,grow
4,桁違いに尖れ。         Be extraordinary
5,イノベーション体質であれ。  Be an innovator

コーポレートバリューを言語化したのは最近なのですが、まず、桁違いに尖れというのは、誰もやったことがないことをやっているということです。創業メンバーは特に、特定分野では誰にも負けないという力を持っていると思います。GISの第一人者、リモートセンシングの画像解析の第一人者などです。2番は今もメッセージとして出すことが多いのですが、会社のオーナーではなくてもプロジェクトやプロダクトのオーナーとしての気概を持ってほしい。そのような役割を持っていない若手の社員であっても、少なくとも任されたタスクのオーナーとして自律的に仕事に取り組んでほしいというものです。会社が大きくなってきたタイミングでは、未来の課題を解決しよう、という発信をすることが多くなりました。よく「10年後の顧客に売っていこう」という話をするのですが、いま業界で顕在化している課題やニーズについては、誰もが気付いており競争が激しい一方、未来の課題を炙り出し誰よりも先に解決策を提供するからニッチを独占できるのだと思っています。例えば、訪問先で「点検の課題は何ですか」と聞くのではなく「点検手法を教えてください」と聞くようにします。課題を聞いている時点で「点検手法が正しい前提」に立っていますが、点検手法を聞くことで点検手法を見直せる可能性が出てきます。前提や前例を疑うことは非常に難しいのですが、未来の課題を解決するため、こだわっていきたいと思います。

(蓬田)尖りという話も出ましたが、規律と自律がベースにあるレベルの高い尖りだと思っています。営業先になる大企業に自信を持って紹介することができます。マナーもそうですし、大手企業またはグループ企業出身の方が多いので、クライアントの意思決定プロセスや組織論理を分かっていることがプラスに働くことが多いと思います。テクノロジーSaaSという分野なので、顧客の意思決定プロセスに合わせて進捗させる、ということが求められます。相手の組織論理を分からないと難しい面があり、営業、サポートなど、各部門に必ずそういう経験者がいることも強みです。

ーーなぜこのバリューに行きついたのでしょうか。

(渡邉)前職の三菱商事での経験も影響しています。総合商社というのはゼネラリストを育てる環境だと思います。ゼネラリストというのは多くの場合その業界のスペシャリストには勝てない。さらにもっと言えば世の中で本当に結果を残している人は、スペシャリストでゼネラリストだということです。そうなるためには、ある領域でスペシャリストになってからゼネラリストになった方が強い。将来、社長になりたいとかマネージャーになりたい、という人にもまずこれを話すようにしています。

(蓬田)総合商社出身の方々は高いレベルのゼネラリストの方が多いですが、スカイマティクス、渡邉さんはゼネラリストだけでなく尖ったスペシャリストをどんどん仲間に加えているので、強い組織になっていっているんですよね。レベルの高いゼネラリストと尖ったスペシャリストが一緒に仕事をすることで、高い実行力を発揮していると思います。ただ渡邉さんは先ほどから尖ったことばかり仰っていますが、人への許容度は高い人なんですよ。スカイマティクスは本当に色々な人がいる会社だと思います。

(渡邉)いま会社にいない、と思うタイプの人と会いたくなるというのもあるかもしれません。会社は同質化しない方がいいので、タイプの違う人を仲間に加えたいという想いがあります。とはいえ、組織作りは苦労の連続で迷うこともたくさんありました。そもそも先ほどお話ししたバリュー通りにはいきません。自律的な行動を期待しても、指示待ちになってしまう人もありますし、プロフェッショナル性が高いのでコミュニケーションが不足しチームでの物づくりが思うように進まない、というケースに悩んだこともありました。コーポレートバリューを言語化したのは、そういう反省があったからです。

ーーコーポレートバリューはどのように事業運営に生かされたのですか。

(渡邉)採用においても、コーポレートバリューを発揮できそうなタイプか、というのは

最上位の評価指標に置きました。組織や個人KPIの設定もコーポレートバリューに紐づけています。1か月に一度、経営説明会という全社員向けに事業状況や方針を説明する場があるのですが、5項目でそれぞれ価値発揮した人を具体的な理由を添えて表彰する、ということをしています。今年度から取り組んでいるのですが、理解浸透が進んでいると感じます。創業期はどこもそうですが、メンバーはリファラルなので阿吽の呼吸で仕事ができます。でも20-30名からそうはいかず、例えばエージェントさんから紹介をいただいても、2,3回の面接では中々人物を見極められません。そんなときに自分達が大事にする基準があるととても役立ちます。バリューの言語化は社長メッセージなどで日々伝えてきたことから、幹部メンバーがスカイマティクスで働いていて実感している当社らしさ、と挙げていたポイントを抜き出して固めていきました。コピーライターの方に入ってもらって言葉を丁寧に磨いてきましたが、最終的に納得する言葉になるまで半年くらいかけたかもしれません。やってみての感想ですが、例えば「イノベーション体質であれ」というバリューに対して、社員から共感の言葉をもらったことは嬉しかった出来事ですね。テクノロジーの人だけではなくて、コーポレートの社員でも、昨日より今日良い変化を会社にもたらす事ができればイノベーションと言えるという意味だと理解してもらうことができ、「体制」という言葉ではなく「体質」と置いている意図が伝わったと感じました。

社会課題解決の第一歩は、人の行動原理が変わること。
ディープテックには、複数の課題を解決できる魅力がある。

ーースカイマティクスが今後取り組んでいきたいことについて教えてください。

(渡邉)3Kを4Kにアップデートする、というのは今後も大事にしていきたいと思っています。簡単には実現できないし、課題を劇的に解決することができなければ到達しない目標です。農業の『いろは』をなぜ開発したかにも繋がりますが、ご存じの通り日本は農家が減っています。農家の集約が進んでいき、近い将来には現在100万軒の農家が60万軒にまで減ると言われています。問題は集約したときに隣の農地をもらえるわけではないということです。そうなると、今はまだ顕在化していない課題が顕在化してくる。それは何かというと、農地が点在化することによる移動時間です。物理的な距離が発生するので、リモートを活用していかないと立ち行かなくなりますが、『いろは』はその代替にもなります。このように、今だけの3Kではなく、10年後に残る“キツい”をちゃんと解決していきたいと思っています。プロダクトの世界観として、よくグルメアプリを引き合いに出すのですが、すごく便利なサービスが数多く出ていて、ヘビーユーザーもたくさんいる。でも、現地に行くには地図が必要で、どのサービスを経由してもGoogleマップを経由するようになっています。私たちは、その産業に最適化された地図を提供していきたい。そこに資するプロダクトを開発する会社でありたいと思っています。

ーーもう少しプロダクトの特徴について教えてください。

(渡邉)業界別のアプリケーションをSaaS型で提供している企業に見えると思いますが、各プロダクトがその業界に最適化された情報地図の役割を果たす産業用Googleマップのような存在に進化させたいと考えています。その先に3Kを4Kにアップデートする、という未来があると思っています。各業界の課題を解決する日本初のソフトウェアサービスとして、センサは自社のものでなくてもいいと思っています。世界を見据えているから、あえてハードに依存しないという方針です。『いろは』と『くみき』はカンボジアでも試験を開始しています。特に日本で伸びているのは『くみき』です。ドローンを利用する人の多くは、三次元データなどの地形データを作ることを用途の一つとしています。その時に、「くみき」のサイトにドローンの画像をアップロードするだけで、何の設定もいらずに最安価格で目的を果たすことができます。従業員10名から5000名以上の会社まで導入いただいているのですが、ドローンを購入した人が一番最初に買うソフトにしたいです。地形データというと防災分野など限られた用途に見えますが、当社の「くみき」は17業種で使われているという事実もあります。これまで、ドローンを飛ばす人はプロの方ばかりでしたが、今はそうではありません。ソフトウェアも簡単でないと浸透していかない。スマートフォンのアプリと同じ理屈です。安価に開始でき、自分で何もしなくても自動でデータが出来上がる、というものです。

(蓬田)価格も含めた導入ハードルの低さが特徴で使い倒してもらうための発想に富んでいます。より根っこの課題に切り込みたいから顧客を広げる戦略に振り切ることができる。渡邉さんのやり切り力がある、というのも投資家としては期待している部分なのですが、点在する課題を、全部きれいにしそうなワクワク感があります。

(渡邉)くみきはローンチして以降、解約が本当に起きていないのです。お客様としては、「一旦取得したデータはクラウド上に保存しておこう。必要に応じて目的に即したオプションサービスを利用して解析すればいいので、月額3,000円の基本部分はずっと契約しておこう」というお客様も多いです。農業分野では、米農家さんの話なのですが、お米の等級を判定する行為は絶対必要で、『らいす』には期待が集まっています。数千名の方に使っていただいているのですが、70代や80代の農家さんも使っていて、『らいす』を使うためにらくらくホンからスマホに変えた、という方も数多くいます。人の行動原理を変え、スマート農業の敷居を下げることができた。リモートセンシングを民主化したアプリになっている、と感じた瞬間でした。

ーースカイマティクスで働く魅力は何か、読者の方にメッセージをお願いします。

(渡邉)テクノロジーをベースにしているからこそ、複数業界に対峙し、複数プロダクトを展開することが可能になっています。当社で仕事をすることで、複数の課題解決ができる点は魅力だと思います。他の業界の課題を知るからこそ、その業界しか知らない人が気が付かない課題に気付ける。自分の新たな知見や関心分野も広がっていきます。この点は顧客にもベネフィットがあって、当社もバックエンド側の技術を共通化することにより、安く提供できるという価値にもなっています。社会の課題、未来の課題を解決することにワクワク、ゾクゾクできる人は是非話を聞きに来てください。苦しいことも多いですが、それを上回る楽しさがあります。ビジネスサイドの方にとっては、社会課題を自ら発見しビジネス化するという喜び、エンジニアにとっては、新しいプロダクトを自ら開発し、自分の周りでもどんどん次のプロダクトが生まれていくという新鮮さがあり、機能追加だけでなく、いくつも新規開発が走っているから、自分が担当したいことを狙いにいける醍醐味もあります。コーポレートの方にとっては、当社のような変わった組織で次世代のコーポガバナンスを作っていけるという魅力があると思います。どの職種と役割においても、「私がオーナーです。」ということが絶対に言える状態になる。今以上に生きている実感を感じられる毎日だと思います。

(蓬田)課題先進国の日本発であることからも可能性を感じる会社で、グローバルで戦える、実際に戦い始めていることも魅力です。私自身も経験があり、多くのスカイマティクスに在籍する社員もそうだと思いますが、大企業で大きなプロジェクトをやっているときに、会社のブランド、資本があるからと気づくことってありませんか。いま、本当はやりたいと思っていることが、スカイマティクスならできる、という可能性も高いと思います。是非覚えておいてもらいたい会社名です。

スカイマティクス会社ページ
https://skymatix.co.jp/

スカイマティクス採用ページ
https://skymatix.co.jp/smx-recruit/

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